まぁ要するに言いたいのは、修正前のキモい方の実写ソニックのキャラデザにはきちんとストーリーと密接な意図があったという事なんですね。あのデザインを前提にストーリーが組まれてたのに、恐らくデザインだけ無難な感じに修正してしまったせいで不自然な流れが出来てしまった、というお話。
— koichil (@koichil) 2020年7月11日
▲本記事を要約するとこういう事
記事タイトルで「不評なのか?」と思い開いたそこのあなた。そんな事はなく、普通に良い映画だったよ。とりあえず最後まで聞いてくれ。
観に行きましたよ、ええ。COVID-19で数々の映画が公開延期になる中、この映画も日本での公開は延期されてしまったわけだが、とりあえずそれ以上延期せずに公開された事をまず褒めたい。苦渋の決断だったと思うけど、お疲れ様です…。
COVID-19が流行してから既に半年以上経ったが、その間に映画館には行ってなかったのでクッソ久しぶりの大スクリーンでの鑑賞になった。やっぱ大画面で集中して観たい物ですね、映画は。
さて、実写版ソニックは公開前に色々ゴタゴタありましたよね。それについての俺の所感は以前記事で書いた通り。
デザインの修正について色々文句はあったけど、だから「観に行かない」という選択肢はなかった。有言実行。何故ならソニックのデザインとシナリオは関係ないからだ。
…と最初は考えてたわけなんだが、鑑賞後に気づいてしまった。やっぱりデザインは修正するべきではなかったと。この理由については後程。
感想を述べる前にまず、俺のソニックというキャラクターに対しての理解力はほぼないのでその観点では語れない事は伝えておきたい。シリーズ作品はほぼ遊んでないし、アニメ版の『ソニックX』だってどんな内容だったか記憶にない(小さい頃ちょこちょこ見てたという事実の記憶はある)
ただ、人生で初めて遊んだコンピューターゲームはメガドライブの『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』であり、ソニックは一人のゲームキャラとしてしか見ていないが思い入れは非常に強いという事だけは言っておく。『ソニック・ザ・ヘッジホッグ3』までは一応既プレイです。
この映画も登場するギミックや演出は、基本的にメガドライブ版『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』準拠なので、そこら辺のシリーズしか履修してない俺にとってはかなり見やすい感じだった。というか「ソニックは脚が速い」という基本設定だけ抑えてれば普通に楽しめると思う。
世界観や設定の変更
さて、この手の実写物で俺が気になるのは「何故その作品で実写化する必要があるのか?」という部分だ。
やはりここはサンフランシスコの都市や万里の長城を駆け抜けるソニックという画が強すぎて俺は満足したし納得ができた。そう、我々現実世界を駆け抜けるソニックというシチュエーションは、実写以外の媒体では絶対満足に描けない部分なのだ。スタッフ達もソニックを実写化するにあたってこれがやりたかったんだろうというのが伝わってくる。
だが、これを実現するため本作には世界観や設定に変更が加えられた。何故なら原典のソニックにはサンフランシスコも万里の長城も登場しない(はず)からである。
同じ我々現実世界を舞台にしてない実写化コンテンツで言うのであれば、かの実写映画『名探偵ピカチュウ』は、『Pokémon GO』の流行で当たり前になった「現実世界とポケモンの共存」という文脈があったからこそ、実写の人間と実写ナイズされたポケモンの共演に計り知れない意味を見出す事ができたといえる。さらに言ってしまえば、ポケモンは原作からしてファンタジー世界などが舞台ではなく、我々現実世界と近い上に、人間が登場する近代的な世界観を持っているからこそ、自然に実写化が行えた。
一方でソニックはどうだろうか。ソニックシリーズも別に人間は登場しないわけではない。エッグマンも(多分)人間だし、近代的なメカも登場する。近代的な都市を駆け抜ける作品だって多い。が、本作では思いっきりそこら辺は変えてきた。
ソニックを世界線は同じの地球から離れた異星に住んでいた(原典とは別の)存在として再設定がされたのである。やろうと思えば『ソニックX』のように次元が乱れて人間の住む地球に合流するみたいな事もできたであろうに、あえてそうしなかったのはスタッフが本作のソニックを異世界人ではなく「エイリアン」として強く描写したかったからなのではないだろうか。
音速ハリネズミが当たり前ではない世界
エイリアンの話をする前に…。
「もし我々の現実世界に音速ハリネズミが現れたら?」
本作はその描写がとても魅力的だった。生物としてのポケモン(複数個体が存在する)が当たり前のように暮らしている実写映画『名探偵ピカチュウ』と違って、ソニックは1つの個体しか存在しないキャラクター性なので、地球人がソニックの能力に驚き翻弄されるというコメディ描写にも説得力が生まれる。ソニックというキャラクターを存分に活かすための前提となる世界観が出来上がっていた。
当然、元々ソニックがいない世界なので、そういった不思議な存在が出現したらその力を悪用しようとする存在も出てくるし、そこにリ・イマジネーション(仮面ライダー用語)されたエッグマンを当てはめるのも中々上手い。ぶっちゃけこの映画のエッグマンは外見もキャラも原典からかなりかけ離れているように見えるのだが、そもそも元から地球人という設定に変えられてるので、実写向けに再解釈されたエッグマンとして受け入れやすいなと感じた。
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エイリアンとして扱われるソニック
実写でやりたかった事…つまりソニックに地球で駆け抜けさせるには、ソニックが地球に留まる理由付けが必要。このソニックはリングの力でいつでも地球から離れる事ができちゃうみたいだしね。
ソニックに「グリーンヒルズ」やその住人への愛着を持たせ、さらに保安官のトムのサンフランシスコへの移住を留まらせるドラマと対比させる事で、ソニックが地球という星を気に入り本心から留まりたいという描写をわかりやすく伝えてくれたのが好印象。
そう、地球という星を気に入って永住を決心するって、エイリアン物の文脈ですよねこれ。『E.T.』的な。いやE.T.は結局別れてたような気がするけど。
地球に謎の存在が現れて機関が動いたり、悪の科学者が暗躍したり、トムとグリーンヒルズを通した「本当は愛着を持ってる場所から離れたくない」というドラマを展開する上で、ソニックをエイリアンとして扱うと非常に都合がいいんですこれ。
作中でソニックに初めて会った地球人は彼をハリネズミではなく「エイリアン」として表現する事の方が多かったし、意図的な物だと思う。
事実、本作のソニックは他の星から来たので本当にエイリアンなのだが、だからこそ彼にとって物珍しい地球の文化を存分に楽しむために、地球という舞台で能力を発揮する理由にもなる。ソニックを実写化するにあたり、ソニックに実写でやらせたい事を自然に描写するためには本当に都合がいい。お前さっきから都合が良いしか言ってないな。
って考えると、この映画は真剣にソニックで実写をやる意義を考えてるんだなぁと俺は感じたわけです。
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だからこそ変えないで欲しかったデザイン
本題に入ろう!しつこいぐらい記したが、この映画のソニックはハリネズミではなく「エイリアン」として描写されていると言った。ここでいうエイリアンとは、地球人の図体に近いタイプのエイリアンだ。何故そう言えるのかを説明する。
作中では、トムがソニックの願い(バケツリスト)を叶えてあげるために街の酒場で一緒にアレコレ楽しむシーンがある。映画を見た方なら「いやいや…ダメだろ」となる展開が挟まれる事に気付いているだろうか。
ソニックは基本的にその姿を見られてはいけないはずなのに、ちっともその姿を隠していないのだ。もちろん、ソニックがコソコソしてたら話を展開できないので仕方ないのではあるが。
一応劇中では、トムがソニックの見た目について「病気で背が伸びない&肌の色が普通ではない(うろ覚え)人間」と酒場の人達に説明してるので、それで通してるつもりなんだろうが、どう見ても人間ではないソニックの見た目では無理があるシーンとなっている。
そう、無理がある。どうして無理が出てしまったのか?即ちデザインを変更してしまったから。
今日は #レディースデー👩🦰
— 『ソニック・ザ・ムービー』公式 (@Sonic_MovieJP) 2020年7月7日
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修正後のデザイン。人間と言い張るには目がデカすぎる点がわかりやすいだろうか。二次元のキャラクターすぎて無理があるのは明白だ。
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— 『ソニック・ザ・ムービー』公式 (@Sonic_MovieJP) 2019年5月2日
もたもたしてると、おいてくぜ❗️
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一方でこちらが散々キモいと不評だった修正前のデザイン。見てもらえばわかる通り、このソニックは実写の人間が多く登場する実写化に合わせて顔の造形なども地球人に近づけている。
つまり何が言いたいか?何故本作のスタッフはあんな間違いなく不評を受けるデザインで最初は製作を進めていたのか?
それは、ソニックとトムが地球で遊ぶシーンを無理なく入れるためであろうと俺は推察した。修正前の地球人に近い造形ならトムがソニックを酒場の人達に紹介する言い訳も修正後と比べればだが納得しやすい作りになっていたのである。が、実際はデザインを修正してしまったばかりに一連のシーンが不自然になってしまっている。
さらに言ってしまえば、作中の地球人がソニックの事を散々「エイリアン」と表現するのも修正後のデザインでは違和感が出てしまっている事にお気づきだろうか。修正後は二次元キャラクターとしての造形にあまりにも近すぎて「エイリアン」という感想にはならないだろう。
対して、修正前のデザインなら、確かに「エイリアン」という感想になるし、作中の地球人のソニックに対する接し方も納得しやすいのではないだろうか。
本作を観る前は、俺もソニックのデザインはストーリーに影響を及ぼさないだろうと考えていたので、デザインの修正を渋々受け入れた。しかし、実際のところは修正前の不評な造形にはソニックを「エイリアン」として扱い、自然な形で地球人との交流を図らせる意図が明確にあったわけだ。
つまり、ソニックのデザインに対する抗議の声、それを受けての実際の修正は、本作のストーリーに歪みを与えてしまったという事になる。
…って考えると、やはりどうしてもソニックのデザインは修正前で押し通して欲しかったという気持ちが、鑑賞後にますます強くなってしまった…。
大体これは「実写作品」なのだ。「フル3DCGアニメ」ではない。修正後のデザインは確かに多くの人のソニック像に沿ってるし、俺も可愛いと感じた。うん、可愛いよ。それは正直認める。だが、実写作品でそれをやる必然性はあまり感じられない。
何回も例に出して申し訳ないのだが、かの実写映画『名探偵ピカチュウ』のように実写なら実写らしく実写に沿ったデザインにした方が「自然」なのだ。修正後の実写ソニックは、例えるなら実写映画『名探偵ピカチュウ』にフサフサじゃない普通の3DCGのピカチュウが登場しているようなものなんや…わかるか…わからない?そうか…。
と、もっともらしい意見を述べたが、恐らく大衆はそんな事一々気にしないで「やっぱ修正後のソニックだな!HAHAHAHA!!!」って考えてるんだろうし、その方が興行成績良いんだろうなぁ…と思うと悲しくなってきますね。クリエイターの通したい表現が潰される案件(卑屈)
とにかく、作品のデザインに関しても不満なら声を上げるという行為が、必ずしも正しいとは限らないという事を学びました…。
でも映画の最後にサプライズで出てきた某キャラに関しては修正前の方向性のデザインだったら倒れてしまうかもしれないので、これで良かったのかもしれない。
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ソニックの性格面でのキャラ付けにも貢献している「脚の速さ」
まずクロックアップですよ、ええ。
「クロックアップ」ってまたライダー用語じゃねーか!わからない人にどう説明するんだよ!と言われそうだが、アレはクロックアップ演出としか表現しようがないので…わからない人は調べて下さい。
この映画の最も魅力的な部分だったよね。ソニックの「脚が速い」設定って各種媒体だと我々目線というか、ヤムチャ目線というか、とりあえずハリネズミが高速で動きまくってるという物が圧倒的に多いんだけど、この作品は「実写映画」なので表現の幅が広がっていた。
「ソニック目線」で時が止まったかのように周囲の人物や物体が静止し、等速のソニックがその世界を動き回る演出。まぁやっぱりクロックアップですよね。うん、クロックアップ…。実写ソニックは実質仮面ライダーカブトだった…。
やっぱ特撮オタ的にはメリケン製の高クオリティなクロックアップ演出が滅茶苦茶見れたのがとても嬉しいんですよ。ソニックは「脚が速い」だけなのに、その他の動作も高速化してるのはおかしいだろ!という粗はとりあえず気にしないけどさ…。周囲のタキオン粒子でも操作してるのか?
で、クロックアップ演出やただ駆け抜けるだけじゃないんですよね。脚の速さを活かして、ソニックに「一人芝居」「全部俺」をさせるシーン。これがすごい。
例えば野球って本来は9人で遊ぶ物なんですけど、この映画はそれをソニック一人に全部やらす。ソニックがボールを投げる。ソニックはボールより速く動けるので、ボールが届く前にバッターボックスに移動できる。そしてバッターとしてそれを打つ。ピッチャーもランナーも同じ要領でソニックがやる。
ソニックの脚の速い設定一本でここまで多用な表現ができるとは…。実写ってやれる事こんな多かったんですね~。
さらにそのソニックの一人遊びを「一人ぼっちで寂しい」という気持ちやキャラに繋げ、そこからトラブルに発展させる作劇が見事。この映画は基本的にソニックの脚の速い設定一本から色々なシーンに繋がるので、その設定だけ抑えておけば映画を楽しめるってのはそういう事なんですよ。初心者にも優しい。
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というわけで、感想はそんな感じかな。思ったより長くなってしまった。
デザイン修正へのモヤモヤは依然として残るどころか強まってしまったけども、それ以外は「実写化され再解釈されたソニック」としては非常によくできてて、とても楽しめる映画だった。
劇中で登場する「キノコの星」とかもライバルゲームキャラ(配管工)への当てつけだろ!とジョークとして感じ取れるシーンもあったり…。そういう小ネタも楽しかったですね。
あとは…なんか調べてみると、ソニックの声優(日本語吹き替え)について炎上もしてたそうだが、最終的には慣れたから別にどうでもよかったかな。元より違う世界線のソニックだし、一々キレる事じゃないと思う。
COVID-19が流行る中、少し映画館には行きづらいかもしれんが、都心でもガラガラなんで多分感染リスク低いんじゃないかなと思ってます。いや各自で判断して欲しいので責任は取れんが。みんなもせっかくだから観に行こう実写ソニック。
~2022/09/01追記~
続編観たので、雑感を貼っておきます。
『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』観終わりました。前作の居場所と家族を失って地球にやってきて、新しい居場所と「友人」を作れたという異星人モノの続編として、めっちゃ良かったです。
— koichil (@koichil) 2022年9月1日
地球上のソニックの成長を描くに当たって、精神的な関係性は友人から家族に昇進させて、
(6262字)