まぎかる゜火葬場

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感想『映画 妖怪学園Y 猫はHEROになれるか』 おバカになって楽しめる一作

テレビを見てたら「絶賛公開中」のCMが。あっそういえばもうそんな時期なのか…ポケモンとか色々あってすっかり忘れてた。

というわけで、いつも行ってる子供向け映画中心に上映してる映画館へGO。

 

妖怪ウォッチの映画シリーズと言えばなんといっても、毎作既存の枠にとらわれない「新たな試み」を積極的に実行する点にある。

正統派な第一作を除き、第二作目以降は「オムニバス」「実写とアニメの融合」「作風が真反対になったスピンオフ」「人気キャラのスピンオフ過去編」といった軸。

 

長期シリーズの劇場版って、毎回同じフォーマットだとどうしてもマンネリ化しやすいんですよね。例えば「劇場版アニメポケモン」なら、現行シリーズをベースに伝説/幻のポケモンと交流をしたりバトルをしたりみたいなのが基本フォーマットとなっていて、まぁこれは「キミきめ」以降崩されるのだけども。

対して『妖怪ウォッチ』の映画は第二作目以降から毎回王道とされるフォーマットを崩していく。個人的にはそこが毎回楽しみで見てるんですよね。

 

今回の映画は前々作、前作に引き続きまたもやテレビシリーズ本編の主人公・ケータが登場しない異作。前々作、前作は基本的にとても真面目路線で、いわゆる感動を狙った作風だったが今回はなんと擬人化した妖怪達が登場する「学園パロ」という事でノリ的には明るい物に戻った。

個人的には妖怪ウォッチって感動路線でやろうとすると「ズレてる」感覚があったので、本編と同様のコメディ路線に戻ってくれたのは嬉しいかもしれない。と言ってもシャドウサイドもテレビシリーズの方はコメディも程よく混ざっててとても好きだったんだけどね。

 

※以下、作品のネタバレを含みます。

おバカギャグの大洪水

風邪引いた。いや前作とかから大分ノリが変わりましたねこれ…。

ジャンルとしては「学園コメディ」が強くしかも小中学生が反応しそうな下ネタやギャグがすごいペースで繰り広げられる。個人的にはアニメ『妖怪ウォッチ』本編とも違うノリ。

 

間違いなくコロコロギャグみたいなノリを受け入れられるかで作品の評価は変わるだろう。それ以外にも本編の「おっさんヅラ部」みたいなしょうもないコーナーのノリのギャグが挟まる部分も多い。ここだけはちょっと好きじゃなかったかな。

 

とにかくやりたい事を詰め込んでみた

まぁなんというか、レベルファイブの日野社長や監督をはじめとした製作陣が脳みそを小学生にしてやりたい事をとにかく雑多に詰め込んだ感すごかったよね。脳みそ空っぽだろ!!!いやそれが悪いという話ではなく。

 

映画タイトルにある通りヒーロー物がやりたかったんだろうな、と思った傍らでキャラ萌えや恋愛を重視した学園物をやりたいという気持ちも見えない事はないし、今度は妖怪ウォッチらしい子供がわからないパロネタもどんどん挟まる。最後はTRIGGERかよと言わんばかりに完全にロボット物になる。とにかく方向性がシッチャカメッチャカなのだ。

 

一応物語を構成する軸としては原典同様に「妖怪退治」がある。当初は俺も「妖怪と関係ねえただの擬人化学園パロなのかな…」と思っていたのだが意外や意外、そこはちゃんと『妖怪ウォッチ』と同じなので驚いたし受け入れやすかった。

 

…まぁ、というわけで、この映画には「テーマ」という物もあまり見えてこない。いや実はあるのかもしれないけど、少なくとも俺はわからなかった…。

主人公のマタロウが、たまたま(たまたまじゃない)最後に活躍する流れもまぁ…なんというか今までやってきた事が積み重なった結果…とかでもなんでもない。

 

ただそこにあるのはスタッフの「これを映像で表現したい」という欲望。間違いなく、それをあらかじめ理解していないと面を喰らう事は間違いない。

 いや開き直るなよ!!!!!もしかして「細かいこと気にせず生きてこう」がテーマのつもりなのか!?凹凸だらけだ!

まぁ妖怪ウォッチらしいといえば妖怪ウォッチらしいかもしれない…(本当か?)

 

そういえば黒幕(?)のメドゥーサが学園中の青春な「ムラムラ」を吸収してウンコになるの、スタッフの「青春なんてクソくらえ!」という思いを受け取れた。

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キャラクター造形と原典

上述した通り、この映画に登場するメインキャラクターは主人公のマタロウを除き、原典『妖怪ウォッチ』に登場する妖怪達を擬人化したかのような姿だ。

その擬人化デザインに関してはとても素晴らしい。流石レベルファイブといったところか。ふぶき姫が元になった「姫川フブキ」ももちろん可愛いし、メラメライオンを元にした「雷堂メラ」や、まさかのわりとマイナーどころである"えんらえんら"を元にした「えんら先生」も自然な感じに擬人化が施されている。

 

特に俺が惚れたのはやっぱエマちゃん(チョロい)

恐らくエンマ大王が元になったのだろうか。すっげえ可愛いなこれ…。エンマ大王は元から人間みたいな姿なので、これじゃ擬人化というより女体化なのではあるが…。まさかエンマ大王にこんなポテンシャルがあるとは思わなかったぞ。

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キャラクター|『映画 妖怪学園Y 猫はHEROになれるか』公式サイト より

 

じゃあ、みんな原典通りのキャラなのかと言われると…………全くそんな事はない。

まず大人気のジバニャンを元にしたジンペイからし微塵もジバニャンのキャラは残っていない。作中のジンペイはコロコロの漫画とかにいそうなテンプレートな主人公キャラなのだが、そもそもジバニャンはめんどくさがり屋のドルオタキャラなのでかなりかけ離れてる。

顔がまんまコマさんのサン太夫も、原典のコマさんのような天然キャラでもないし、トレードマークとも言える甲州弁すら使わない。

フブキちゃんも…いやまぁ確かにトレードマークと言える特徴はないし性格は無難に同一だったかもしれないが、イメージとは真反対の機械いじりが好きな女の子にされてる、まぁその一点だけなのではあるが。

 

というわけで、元の『妖怪ウォッチ』に登場する妖怪のキャラが好きなんだ!って人にはあまりオススメできないのかもしれない。あくまでガワだけモチーフにした別物と考えるべきであろう。

個人的にはこれだったら無理に妖怪ウォッチの派生作品にしなくても…とは思ってしまったのは否定できない。色々販促の事情とかも考えると人気IPである『妖怪ウォッチ』を使うしかなかったのかもしれないが…。

 

劇場版である必要とは?

これは前々作のシャドウサイドもそうだったのだが、この映画はまたまたテレビでやる本編の前日譚的な位置付けらしい。メディアミックスをお得意とするレベルファイブとしてはあまりにも恒例なのだが、やはり気になってしまうのは映画の内容自体がテレビシリーズでも出来そうな点。

主人公の学園への入学や他のキャラ達との出会いは映画でやらないで長期的にやるテレビシリーズで行うべきではないだろうか?

エピソード内容もテレビシリーズで出来そうな6話分を1時間40分に収めてみました!みたいな感じでイマイチ大スクリーンで見る必要性を感じにくい(作画はすごかったけどさ)

 

ここらへんもどうしても販促の事情というか、やはりメディアミックスならではのお金の匂いが強すぎるのは少々辛いかもしれない。

基本的に誰でも無料で見れるTVシリーズ本編を見せておいて「重要な部分は映画で見てね!」というのは、いやぁやっぱ汚いよねw

せめてシャドウサイドの映画のように一本の大きいシナリオを劇場版で描くというのであれば大スクリーンでやる意味というのも理解できるのではあるが…。この映画はそれどころか数本の小さいシナリオをなるべくシームレスに繋げただけみたいな感じだしなぁ。

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テーマ曲が神

正確には映画のエンディング曲。その名も「メテオ」。

 お気づきだろうか。そう、なんと作詞・作曲は人気のボーカロイド楽曲で有名で俺も結構好きなナユタン星人。楽曲PVでお馴染みのキャラクター「アンドロメダ(※ファンからの愛称)」もなんと本編に一瞬だけ登場する。

 

妖怪ウォッチ』にナユタン星人?何故?と思われるかもしれないが、元々『妖怪ウォッチ』は企画段階で日野社長が小学生達にとにかくアンケートをし「子供達に何が好まれるのか」を分析した上で誕生したIPという経緯がある(うろ覚え)

ネット社会が到来した今、現代の小学生達は本来オタク層だけが楽しむコンテンツへのアクセスが容易になったため、ボーカロイド楽曲も守備範囲だと言うのだ。

それを考えれば、2019年でも人気のボカロP・ナユタン星人をこのシリーズに起用するのはある種自然とも言えるだろう。恐らく小学校高学年~中学生をターゲットにしてるのかもしれない。

 

さらにおもしろいのは、妖怪ウォッチシリーズにおける「シャドウサイド」の存在。ご存知の人はいるかもしれないが、シャドウサイドは妖怪ウォッチが一番ブームにあった2014年付近に園児or低学年だった層が、妖怪ウォッチを卒業し「ちょっと背伸びをしたい」と思うようになる年齢を意識して展開されてるという。

まさにそれで妖怪ウォッチに戻ってきた子供達を"確実に刺して逃さない"方法がナユタン星人の起用と言えるのかもしれない。今でも妖怪ウォッチというIPは子供達の動向をしっかり分析しているのだ。違ったらごめん。

 

そしてそして…ナユタン星人作曲を歌うのはなんとあの「ピンク・レディー」!!!!

マジか!!!???「ナユタン星人×ピンク・レディー」なんて文脈がありすぎる上に贅沢なコラボが実現しちゃっていいんですか!!!???

ナユタン星人といえば、宇宙人というかコスモ的な楽曲が特徴。そこに『UFO』のピンク・レディーですよ!!

 本当に夢のようなコラボ。しかもアニメ『妖怪ウォッチ』って一回『UFO』のパロディやった事が原因で(※憶測)欠番になっちゃった回とかあるんですよね。それを知ってる身としては中々感慨深いというか…。

 

楽曲自体はMVから聴いてもらった方が早いのではあるが、まさにナユタン星人節としか言えない独特なメロディとリズムに、ピンク・レディーの力強い歌声。この組み合わせで最高の物をお出しされたという気分だ。

特に「恋」や「超展開」といった映画本作を表すようなフレーズが歌詞に散りばめられてるのがすき。まさに観る前に聴くテーマ曲としても、観た後に思考を整理するエンディング曲としても成立してると言えるだろう。

 

ハッキリ言って、このコラボ楽曲を実現させたというだけでも、映画に価値があると言って過言ではない。ある意味無茶な要望を通してくれたスタッフ達に感謝。

 

感想はこんなもんだろうか。結構ボロクソに言ってしまったかもしれないが、映画自体はとても楽しい作りである。余計なお涙頂戴展開も何もない、とにかくハイテンションで突っ走る作品なので慣れれば元気が出る映画なのかもしれない。

 

何より、楽しい笑い声が響き渡る中、映画が終わった後に周りにいた子供達の「おもしろかった」が聞けただけでも俺にとっては十分価値があるのだ。

年々存在が危ぶまれる傾向が強まっている「映画妖怪ウォッチシリーズ」。次回作は果たしてあるのか。あるとしたら今度はどんな方向性で攻めてくるのか。まだわからないが、引き続き楽しませていただきたい。

 

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