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感想『小説 ハートキャッチプリキュア!』 小説に落とし込んだ設定資料集

どうせTwitterにダラダラと長文書くなら、簡易的でも良いからこっちに書いちゃえば良くね?というわけで、短く書きます。

当然ですが、本編含めてネタバレありなのでご注意ください。

 

TOKYO MXの『ハートキャッチプリキュア!』再放送を完走し、単独映画も鑑賞し(春映画だけ見れてない)、トロプリの映画にゲスト出演するハトキャ勢も見送り、じゃあ後はもう小説版しかないな、とフォロワーの感想も見て決意。

というわけで、3週間ぐらいかけてゆっくり読みました。基本的に飯待ってる間とか、トイレしてる時にチマチマ読み進める人間なので、これぐらいかかってます…。

 

小説版の内容としては、本編で描かれなかったゆりさんとコロンの出会いから、キュアムーンライトダークプリキュアに敗れるまでの過去編が序盤に置かれている。そこから、つぼみとえりかが変身した本編エピソードを半分ゆりさん視点で描き、ハートキャッチミラージュ登場回や最終決戦などの重要エピソードを文章として再構築した形。

さらに同じく本編では描写が足りなかったサバーク博士とダークプリキュアの関係性などをダークプリキュア視点で描き、ラスボスであるデューンの正体なども掘り下げられている。

 

特に最終決戦やデューン周りは本編と展開が大きく異なる部分がチラホラ存在し、そのまま捉えるなら本編と完全な地続きではないということなのだろうか。

デューンは尺や後述するフィルターでカットしているにしても、デューン戦に突入する前のコッペ様わくわく温泉ツアーはアニメ本編でも見たかった…としか言いようがない。べ、別に4人の温泉シーンを見たいというわけではなく、ゆりさんがこれまで抱えてきた苦慮の浄化的にも非常に重要なシーンがあるからであって…本当です信じてください!

 

さて、タイトルにも書いてある通りだが、この小説版は『ハートキャッチプリキュア!』の設定資料集と言っても良いぐらいには、作品にまつわる裏設定などが明確に語られている。

例えば、デザートデビルによる一斉砂漠化でなぜ結晶化しなかった人々が存在したのかなどの理由付けから心の大樹の基本的な設定が改めて整理されている。これは本編をちゃんと見ていれば、なんとなくで推測できる部分ではあったのだが、劇中で言語化されて語られているわけでもなかったので、改めて明確になった部分と言えるだろうか。

 

他にもキュアムーンライト復活前のゆりさんが生身で驚異的な身体能力を披露していたことにも過去の回想という形で理由付けがされている。プリキュアたちと並走できたのは、ゆりさんが陸上めちゃくちゃ強い女の子だったからだとか、アクロバティックな跳躍を見せていたのもしっかり稽古を付けていたから…いやそれでもおかしくない!?

 

あと、明堂院家とつぼみ達の通う学校の関係性とかね。薫子さんを中心に関係者達がプリキュアになるの、世界があまりにも狭すぎないか…w

 

そして、一番気になったのが砂漠の使徒の3幹部がサバーク博士に攫われ洗脳された背景。実はこれもアニメ本編では明確に語られていなかった部分だ。

コブラージャとクモジャキーは職業的にはなんとなくで想像はついていて、実際にその通りではあった。一番衝撃だったのはサソリーナである。元々は幼稚園の先生だったが、預かっている園児を事故で死なせてしまい、心の花が枯れているところを狙われたというもの。

サソリーナが浄化された後に幼稚園の先生をしている描写は確かにあったが、俺はてっきり病弱設定だったのかな、とか思ってた。それを上回る背景がサラッと語られたのだが、あまりにも重すぎてアニメで放映したら色々まずそうなのは確かだ。ほぼ一文でしか語られなく、そこはやはり設定から飛び出して「物語」を見たかった気持ちは否めない。

 

そう、重いのはサソリーナ達だけではない。この小説版は「ニチアサフィルター」が完全に外れており、結構エグめの流血表現や、コロンに関する「死んだ」という直接的な表現、敵側のプリキュアに対する強すぎる「殺意」、テレビ本編の描写でもキツかったのに赤裸々に語られる月影一家や薫子さんの辛すぎる心情描写など、挙げればキリがない…。

正直…正直に言おう。読んでて俺も辛かった。

 

でもやっぱりこれが『ハートキャッチプリキュア!』という作品なんだと思う。小説に落とし込むに当たっては、ターゲット層も違うし、これを買う人はハトキャを気に入った人達がほとんどなのだから、作品に元々あった魅力が強調されているのは何も間違いではないのだ。

その作品を楽しむファンも作中キャラも辛かったからこそ、作品が描いてきたことに意味がある。そして、やはりこの作品が丁寧に作られていたことを再認識できるのだと思うんですよね。

 

一番良かったのはサバーク博士とダークプリキュアの関係値周りで、これは本編の熱い展開のハトキャ最終決戦では俺が「二人の描写があまりなかったからあんま感情に来なかったな…」と感じてしまった部分だったので、十分に補完されていたと思う。

ダークプリキュアの出自をはじめ、洗脳されたサバーク博士がムーンライトを傷つけないように必死に葛藤をしていたということがひしひしと伝わってきたし、ゆりさんとダークプリキュアが「姉妹」だというのも納得だ。

そもそもダークプリキュア自体が心の大樹の一部を元にしているようなので、理屈的にも感情的にも彼女もプリキュアの一人で間違いなかった、というのが個人的にエモいポイント。

 

さて、良かった点はそんな感じだが、欲を言えば欲しかった点、ここはどうにかして欲しかったという点もある。

例えば、挿絵が1枚でも欲しかったという点。俺はプリキュアの小説は、それまでは『魔法つかいプリキュア!』のしか読んだことがなかったので、まずそっちの印象に引っ張られた。もちろん、まほプリの小説はターゲット層も違うし、発刊されたのは当然ハトキャの小説より後なので、比べるのは酷かもしれないが、せっかくだからやはり欲しかった。

あとは、文章表現が小説というよりは、アニメ制作で使われる「脚本」寄りだなと勝手に感じていて、途中で慣れたもののすごく違和感があったという点だろうか。なんというか、読めばわかるのだが台詞以外の状況を描く文章がほぼ全部「○○した」「■■している」「▲▲と思った」の連続なので*1、小説として読むにはメリハリに欠けるというか、平坦な道を歩かせられている感じなのだ。淡々としすぎている。

恐らくだが、ゆりさんといったキャラクターの心情も本人の言葉ではなく、俯瞰的な語り口で描いてるので、こうなってしまっているのだと思う。

そこは、プリキュアとは関係ない小説も一応多く読んできた俺が真っ先に感じた部分…なのかな。まぁ先述した通り、慣れれば気にならないレベルではあるか。

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ハートキャッチプリキュア!』への解像度が上がる本作、是非手に取って読んでみよー!

 

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▲ハトキャについても細々に書いてます。

 

(2824字)


*1:筆者は日本の義務教育を受けていないので、これがどういう言い方なのかは知らない。