まぎかる゜火葬場

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図書館の資料の中身は勝手に撮影していいのか?

皆さんは図書館には最近行ってるだろうか?

恐らく学生時代に勉強をするスポットとして活用したり、子供がいるなら本を借りに一緒に行ったりするぐらいだろうか。

かくいう俺は夏休みの宿題などを片付けるために毎朝図書館に腰掛けていたが…眠すぎて全く宿題が進まなかった記憶しかない。こういうのはちょっと騒がしいぐらいの場所でやった方がいいと思うんだよね…。

 

で、今は行くか行かないかと言われるとまぁ他の人よりは行く方である。

目的としては『星の子ポロン』という幻のアニメを調査するためで、所蔵資料を漁りにそれまで縁が一切なかった国立国会図書館に行く機会が増えた、最近はそんな行ってないけど。

今はネットで何でも調べられる時代とは言うけど、『星の子ポロン』みたいな昔のアニメはネットで調べても近年の動向しか出てこないわけで、結局のところ図書館で昔の文献を当たる必要があるというわけ。

 

で、図書館で判明した新情報は情報源として研究のための引用をする必要が出てくる。『星の子ポロン』で言えば○○新聞のx月x日に書いてあったよ、と。これは図書館によって方法は細かく変わってくるが、国立国会図書館の場合は毎回「複写申請」を行わないと印刷した資料などを持って帰る事ができないのだ。

これが結構時間がかかるし面倒。借りた資料の何ページ目から何ページ目を印刷したいという旨を申込書に細かく書いて提出、本は一旦職員に返して数十分待たないといけなかったり。ついでに手数料も取られる。

 

普通の本ではなく、昔の新聞を参照するためのマイクロフィルムとかだともっと面倒だ。マイクロフィルムの操作自体が結構難易度が高い事もあり、普段図書館に行かない層の壁になっているのは間違いない。

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んで、今のスマホ時代、図書館の資料を利用するに当たってやっぱり一つの疑問が思い浮かぶ。

「借りた本の引用したいページ、撮影しちゃえばよくない?」

 

…そう、確かに毎回毎回職員に頼んで複写をしてもらうのは時間の無駄に感じる事すらある。しかも今のスマホはわりと高画質に撮影できるので、ぶっちゃけパッと見じゃちゃんとスキャンした画像と違いがわからない事もあるだろう。

 

ただ、図書館の所蔵物を勝手に私的撮影して良い物なのか、恐らく迷ってる人も多いであろう。図書館側が利用者へ撮影を明確に禁止してるのであれば言うでもないが、そうではない場合は著作権的にどうなのか、俺もかなり気になった。

 

というわけでそれについて話してるフォロワーがこんなページを提示していた。

current.ndl.go.jp

まさにその疑問についてまとめ、筆者の考えも含めた情報である。

 

著作権法に疎い方のためにこの記事では要約を行うとしよう。

 

前提として私的利用ではないと撮影は認められない?

これは著作権に詳しくなくてもなんとなくで理解できているであろう事実だが、基本的に他者が権利を持っている著作物をそのまま利用する行為は権利侵害に当たる可能性が高い。

例えば、今回の図書館の撮影のケースで言えば、撮影したページの一部分(または全て)をそのままネット上にアップロードしたりする行為は公衆送信権(ついでに撮影して端末に保存したので複製権)の侵害に該当するのは明白だろう。

 

…あれ?複製権を侵害するならそもそも撮影した時点でアウトだしこの議論は解決では?と思った方もいるだろうか。ここが実は重要なポイントであるので、著作権法第30条1項を参照してみよう。

(私的使用のための複製)

第30条
著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

(略)

 つまり、私的使用を目的とした著作物の複製はこの条文により権利侵害とはならず、権利者の許諾を得る必要もないのだ。

簡単な話で、例えばテレビ番組といった著作物を我々が録画して適法にHDDに保存が行えるのはこれのおかげなのである(本当は録画に関しては同条2項も絡めると単純な話ではないのだが割愛)

同じように、著作物である書籍のページは私的使用を目的としてるのであれば印刷したって構わないし、写真に撮って保存したって構わない事になる。これはもちろん私的使用を目的とした場合であり、例えばインターネット上に無断でアップロードする目的で複製を行った場合はやはり権利侵害となり得る事は注意した方が良いだろう。

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という事は図書館内でページを撮影しても問題ない?

著作権法第30条1項だけに基づくのであれば、私的使用の目的で図書館内の資料を撮影しても問題ない事になるのは確かだ。

事実として文化庁の「著作権なるほど質問箱」では以下のQ&Aが存在する。

Q.図書館の利用者から、自己が所有するハンディコピー機デジタルカメラを持参して当館の図書資料を複製したいとの相談がありましたが、著作権の問題はありますか。

A.利用者が違法に利用することを承知していながら複製を認めた場合などの特別な場合を除き、一般的には著作権の問題はありません。著作権法では、私的使用のための複製(第30条第1項)を認めており、個人的な利用目的で利用者が自己の機器を用いて著作物を自ら複製することは、著作権者に無断でできます。なお、著作権の問題とは別に、図書館の管理上の問題として、持ち込み機器によるコピーを禁止することができるのは言うまでもありません。

 ▲著作権なるほど質問箱 より(現在はページ削除済み)

つまり、文化庁の見解上では著作権法第30条に照らし合わせるなら図書館内での資料撮影は問題ないという考えだ。ただし、文中にもあるように著作権とかは関係なく図書館側が撮影を利用者に禁止させる事は可能であるとしている。

公益社団法人著作権情報センターでのQ&Aも同様の問題に触れているが、こちらもニュアンスとしては変わらない。ただし「自由にあれもこれも撮影しまくるというのは、余り感心したことではありません。」と回答しているように、撮影行為自体が著作権関係なく迷惑になり得る可能性については強調している形だ。

 

つまるところこの「図書館で資料を勝手に撮影していいのか」問題は、著作権法上は問題なく、あったとしても図書館側の規定だったりマナーに左右される、と見られるのかもしれない。

だが、著作権法上でも実は落とし穴(という程でもないが)が一つあるのだ、それが著作権法第31条1項。

(図書館等における複製)

第31条
国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この項において「図書館等」という。)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。
一 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあつては、その全部)の複製物を一人につき一部提供する場合
二 図書館資料の保存のため必要がある場合
三 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合

 我々利用者に関係あるのは「一」の部分。要約すると、図書館に所蔵している資料を利用者に複製する形で提供する場合はこういう条件で認めるよ、というのが著作権法で定められてるというわけだ。この条文では利用者が勝手に所蔵資料を撮影する事は恐らく認められなく、図書館側が主体的に複製を行えるように申請などを一々行う必要がある(恐らくこれも第31条1項に基づいた管理)

 

つまりどういう事か。本当にザックリ言ってしまえばだが、図書館における資料利用という行為において、この「著作権法第31条1項」と先程の「著作権法第30条1項」が"競合"してしまっているという事なのだ。どちらの条文に基づくべきか?利用者が無断で資料を撮影して良いのか?問題を複雑にしてしまっている…。

 

なお、先程の文化庁の「著作権なるほど質問箱」のQ&Aではこの「著作権法第31条1項」については触れられていない。あくまで図書館での資料の無断撮影は私的使用の範囲内の可能性があるので適法という見解を示しているのだが、動向レビューの筆者はこの第31条1項に文化庁が触れていない件について批判をしている。

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結局どうなの?

図書館の資料の無断撮影について、動向レビューの筆者の私見はこうだ。

 

著作権法第30条1項(私的使用のための複製)はあくまで図書館以外の場所で適用されるべきで、図書館内では同法第31条(図書館等における複製)に基づくべき。

・図書館は、著作者等の知的活動の結果生み出された書籍、映像資料等を保存し、利用者に提供する知の宝庫であるため、著作権法の目的として第1条で定められている「著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与する」という視点は維持されなければならない。

 

そして重要なのはこの第31条がわざわざ第30条の次に制定されている点。

「わざわざ第31条で図書館内での複製を限定的に規定してるんだから、第30条よりこちらが優先的に適用されるべきだろう」という考え方のようだ。

 

なるほど、確かにそういった考え方であれば第30条(私的使用のための複製)は文字通りあくまで一般的な私的使用のみに適用されるべきであって、図書館内では通じないと見る事ができるのかもしれない。

 

また、仮に第31条が適用される場合は上述した通り、図書館側が主体となり複製する必要性が出てくるため、図書館職員に確認を取らず勝手にデジタルカメラスマホを使用して撮影を行う事は難しくなるであろう。

一応、文化庁を含めた様々な機関が第30条での適用という見解を示しているため、図書館内での無許諾での撮影はある程度許されるという見方はできなくもない。しかし著作権法の解釈というのは千差万別(言いすぎか?)であり、万が一第31条が適用される可能性も考えれば*1、そういった行為は実行しない方が無難なのは言うまでもない。何よりはやはり、トラブルを避けるため図書館側の規定や職員の案内に従うべきだと自分も考えている。

 

ただ、資料の撮影は最も簡単で紙媒体にダメージを与えにくい方法でもある。さらに資料保存の方法や、来館者の利便性といった部分が時代に合わせて見直されるという事が徐々に起こり得るだろう。

現行の著作権法では法解釈が曖昧だが、改正によっていつかこの点が明確になる日が来るといいですね。

 

なお、著作権法32条に基づき、撮影もしくは複製した資料は引用の要件を満たせばネット上にアップロードが可能な場合がある事は言うまでもないので、図書館での複写資料をネット上で利用したい方々は調べてみよう。

(5592字)


*1:判例も確認できない以上…だが実際に裁判所がどう判断するかは非常に興味がある。