まぎかる゜火葬場

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【パイロット版】感想『アストロマン』 巨大ロボットアニメ史の重大な分岐点を目の当たりにしてしまった…

時間ないので、殴り書き感想です。質は期待しないでください(元から質ないだろとかは言わないで)

 

チャージマン研!』で有名なナックが1972年に放送した『アストロガンガー』のBDを遂に、やっと、我が手中に収めました。

アストロガンガー』自体はYouTubeで公式配信されてた時に視聴済みだったし、動画データも個人的に保存していたので、本来なら円盤なんていくら好きなアニメでも買う必要はないかなー…と思ってたんですが、何故今回購入に至ったのか、BD発売の何が一体すごいのかというのは、前回書いた記事をご参照ください(丸投げ)

まぁ要するに、タイトルにもあるんですが、特典映像のパイロット版『アストロガンガー』である『アストロマン』目当てだったわけですよ。ガンガーのパイロット版ですよ、要するにプロトタイプ版のガンガーなわけです。ちょっと違うかもだけど『星の子ポロン』に対する『ゼンちゃんツーちゃん』。見ないわけには行かない…。

 

www.magika4.com

 

Amazonのクソ遅い発送に苛立ちながらも、やっと届いたガンガーBD。早速、謎のベールに包まれていた『アストロマン』を再生したわけですが…。

 

以下ネタバレ感想なので注意。コアなナックアニメファンは、感想見る前にBD購入して見て欲しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴメス博士!!!!?????!!???

ガンガー本編の敵キャラはブラスター星人と呼ばれる侵略宇宙人なんですが、『アストロマン』に登場したのは「ゴメス」と呼ばれる謎の宇宙人。

アニメのパイロット版と言えば、やっぱ本編との違いやその設定が没になった背景を考えるのが楽しいわけなんですが、初っ端からガンガー本編には出てこない敵キャラが出てきてしまいました。だが驚くのは別にそんな些細なことではない。

 

そう、チャー研から連なるコアなナックファンなら聞いたことがあるかもしれない「ゴメス」という名前とその姿、それが俺に大きな衝撃を与えた。

 

コイツ、『チャージマン研!』のイベントで展示された設定資料で初めてその存在が確認された幻のキャラクターなのである。あ、存在自体はもっと前から確認されてたはず…うろ覚えだけど。

 

ビックリしてしまった。初っ端からいきなりぶっこんでくる…。しかし、一体どういうことなのだろう。何故、チャー研の没キャラと思わしきゴメス博士が『アストロマン』に…!?そして「ガンガーに出てきそう」と早々に見事的中させてしまったDOLさんもすごい、いや冗談抜きで。いや結果論かもしれんけど!

 

アストロガンガー』は『チャージマン研!』より放送が2年早いので、ガンガーで没キャラになってしまった「ゴメス」というキャラクターを、チャー研製作時に再び掘り起こし「ゴメス博士」として再設定したと考えるのが自然だろうか。結局こっちでも没になってしまい、チャー研の裏資料としてお披露目された…のかなぁ…?

 

あるいは、ナックのことなので『アストロマン』の資料が知らずのうちにチャー研の資料に紛れ込んでしまった、という可能性も否定はできなくもない。

 

とにかく、チャー研の設定資料でしかその存在を視認できなかったゴメス博士が、遂に映像で動いている。ファンなら目ン玉粉砕モノである。

どうでもいいけど、ゴメスが初登場する時の宇宙感あるSEがチャー研の小型探知機の音で笑っちゃった。

dic.nicovideo.jp

 

ところで検索したら何故か2015年時点で、ゴメス博士について言及してる方がいらっしゃったんだけど、これは一体…(なんかあったっけ…?)

↑追記
VIPRPGにいるゴメス博士というキャラのことらしい、失礼しました。

 

丸っきり違う主要人物

ガンガー本編の主人公は「星 カンタロー」という少年なのだが、『アストロマン』に登場するのは「達夫少年」という見た目も名前も全く違うキャラクターだ。ヒロインのりえちゃんといった他キャラクターも全く異なるキャラクターとなっているのが、パイロット版らしい。

 

ただし、キャラクターの基本設定や関係性だけはガンガー本編にも一部変更の上で引き継がれていたようである。

例えば、ガンガー本編の主人公であるカンタロー君は、異星人の母親と地球人の父親のハーフ。なのだが、『アストロマン』では父母関係が逆転しており、主人公の母親が地球人で父親が異星人ということになってる。

これに伴い、父母が侵略宇宙人の対抗策としてガンガーを作り上げたという設定は共通してるものの、異星人が地球に流れ着いた経緯が大幅に変更されている。

 

わかる人にはわかる例えで言うと、『仮面ライダーディケイド』に登場する「リ・イマジネーションライダー」みたいなレベルで本編との違いがあったぞ!

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そして登場する強烈な「アストロマン」

つまり、メタ的に捉えるならプロトガンガーなのだが、コイツはもう設定レベルで本編と異なっている。

 

我々が知っているお馴染みのガンガーといえば、「生きている金属」を加工して誕生したいわゆる「金属生命体」である。一応、ロボットということにはなっており、戦闘する時の音や、人が搭乗できるという設定も巨大ロボットアニメのそれなのだが、実態としてはやはりトランスフォーマーのような生きている金属生命体がウルトラマン的な巨大ヒーローのように意思を発しながら戦ってる文脈が強い。「搭乗」も実際には「合体」という描かれ方であり、明らかに通常の巨大ロボットアニメとは異なる。

これのせいでガンガーは人が搭乗する初の主役級巨大ロボットとしてカテゴライズされ、『アストロガンガー』という作品自体も初めてカラー放送された巨大ロボットアニメというアニメ史的にも滅茶苦茶重要なポジションにいながら、2ヶ月放映が遅かった『マジンガーZ』にそのポジションと知名度を奪われることとなる。*1

それ程までに、巨大ロボットが意思を有しているのかどうか、「合体」という演出ではなくしっかり「搭乗」してるかは巨大ロボットアニメ史的にも、巨大ロボットの定義としても、非常に重要だったということであろう。つまるところ、ガンガーはその特殊な性質で、主要な観点から「巨大ロボット」の文脈で語られることが少なかったのである。

もちろん『マジンガーZ』が多くの子供たちに訴求できる偉大な作品だったというのも影響しているであろう。アストロガンガー』も面白いですよ…?

 

一方で『アストロマン』はどうだろうか。どうもこうもない。本編のガンガーに位置付けられる巨大ロボット「アストロ・ジャンボ」は、まさしく巨大ロボットその物であった。*2

そこに金属生命体のような「意思」は存在しない。マジンガーZガンダムのような、操縦がなければ動かないし言葉も発しない巨大ロボットとして登場している。

作中ではレントゲンのような形で「アストロ・ジャンボ」の中身、図解まで描写されるのだが、金属生命体のそれではなく、完全に一般的な「ロボット」として細かくその機構が描かれていた。もしかしたら本編のガンガーも中身はこうなっている可能性はあるが、少なくとも作中でそれが明かされることはなかったので、衝撃的すぎる…。

 

ではどうやってコイツは動くのか。これは『鉄人28号』で確立された「外からの遠隔操作」ということになっている。

「じゃあ別に目新しい要素ないじゃん!」と思ったそこのキミ!まだ話は終わっていない。なんと「アストロ・ジャンボ」、敵の攻撃によって機構がダウンしピンチ!遠隔操作ができなくなるとそれを補うかのように主人公が「搭乗」して操作することになる。*3

なんということだ…これはまさしく『マジンガーZ』が与えた「搭乗型巨大ロボットアニメ」の文脈その物ではないか!

 

それだけではない。「アストロ・ジャンボ」は飛行する際に「翼」が出現する。もうおわかりだろう。マジンガーZのジェットスクランダーその物である。

 

つまり、結局作品は視聴者などに公開はされなかったものの、『アストロマン』はマジンガーZ』より先に人々が一般的に抱えるであろう「人が搭乗する初の主役級巨大ロボット」という極めて重要なポジションを事実として確立していたことになってしまう。

 

ただし、この作品は、企画段階では「少年がヘリコプターのような乗り物で巨大ロボットに合体して操縦する」という設定になっていた。ところが具体的な作業に入る段階になってクレームがつき、「メカニックな取り扱いは駄目、ロボットは生きた金属でできた生き物にしろ、合体もメカ的に行うのではなく少年が宙を飛んで行って溶け込むようにしろ」という、いわゆる当時流行りの変身ものとなり、いろいろと考案したメカニズムが全て破棄されたという経緯がある。

-アストロガンガー - Wikipedia
(2020年8月25日 (火) 12:25)

 

この「企画段階」というのが、まさに『アストロガンガー』のパイロット版である『アストロマン』に反映されたものなのであろう。

仮にパイロット版から設定が大きく変更されず『アストロガンガー』が放送開始していたらどうなっていたであろうか…?そう、正真正銘、『アストロガンガー』が『マジンガーZ』に先駆け「巨大な人型ロボットに主人公が乗り込み操縦するという"巨大ロボットアニメ"と呼ばれる分野に分類される初めての作品」にどういった観点からでもなっていたであろう。

 

だから今この令和の世に、昭和に発生していた「巨大ロボットアニメの歴史の分岐点」Blu-rayという形で復刻され映像化されたのは、計り知れなく重要なのがわかっていただけるだろうか。鑑賞中にこれを理解した途端、俺の頭の中はあまりのことでパンクしそうになった…。

 

まぁでも「アストロ・ジャンボ」のデザイン自体はそのままだと絶対人気出ないだろうなとは正直思っちゃった…。非稼働時は全部真っ青、稼働時に真っ赤になるというデザインなのだが、まぁ…うん…なんかどっちかというと適当に造形された悪役のデザインなんだよね…。本編のガンガーはその2色をかき混ぜ、フェイスは人間と同じ肌色になった親しみのある改変だったんだなぁ…と、ガンガーの設定と合わせ今こうして思える。

 

しかも「アストロ・ジャンボ」、緑のコンクリ(?)みたいなのをマーライオンのごとく口から吐き出し、最後に敵へトドメを刺すという主役機にあるまじき戦闘を行っていた。

仮にパイロット版からの設定変更がなく、ガンガーが多くの巨大ロボットアニメに影響を与える作品になっていたら、ガンダムとかもゲロ吐いて敵を倒していたのかもしれない。末恐ろしい作品である。

 

明かされる『アストロガンガー』の裏話

Blu-rayディスクには解説書、ブックレットのようなものが付いているのだが、これも中々の読み応えだ。

アストロガンガー』制作の意図や背景はもちろんなのだが、『アストロガンガー』続編の企画が持ち上がったことがあるという話や、人型ロボットのパイオニアとしてガンガーが鉄腕アトムトランスフォーマーといった強豪と並んだ逸話などが語られている。

 

アストロガンガー』は海外の一部では大人気という話はよく聞くが、日本ではどうも知名度が低い。近年ではMAD動画やそこから連なる「走るガンガー」や「アストロガンガン」ブームで飛躍的にその存在自体は広く知られるようにはなったが、作品自体をちゃんと見たという人はやはり少ないのではないだろうか。

 

チャージマン研!』の凸凹を舗装し、高予算をかけたかのような面白いアニメ『アストロガンガー』をより多くの人に見てもらうため、是非続編といった企画は実現して欲しいものだなと俺は思う。ただ、個人的に全26話であのセンチメンタルなラストが好きな作品でもあるので、直系の続編じゃなく別の方向が出来れば良いな…とはオタクのワガママだろうか。

 

その他雑感

パイロット版といえ、子供向け作品で車上での行為シーンが出てくるのでビビってしまった。うーん、実にナック。

・異なる生物同士を合体させて怪獣を生み出すのは、多分『仮面ライダー』のゲルショッカー怪人を意識しているのであろうか…。

宇宙生物の手によって大量の羊が骸骨化するシーン、アニメ版『星のカービィ』を思い出してしまった…。

・慣れの問題もあると思うけど、やっぱ本編のカンタロー君とリエちゃんの方が可愛いですね。仕方ないね。

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なんだかんだで結構書いてしまったが、とりあえずここまで。

鑑賞した直後、溢れるリビドーが抑えられず、今回は僅か20分という作品にも関わらず『アストロマン』の感想、あったかもしれない未来を妄想して吐き出さざるを得なかった。というか筆者は別にロボットアニメは全然詳しくないし、あまり見たこともないのに吐き出してしまった。ロボットアニメファンから冷徹な目で見られそうな記述があるかもしれないが、元々殴り書きの記事なので、ある程度はご勘弁をいただきたい…。

 

とにかく『アストロガンガー』ファンとしては見たい物、いやそれ以上の物を見れてしまったので、非常に満足だ。文章ではとても表現しきれない魅力がたっぷり溢れているので、興味持った方は是非『アストロガンガー』のBlu-rayを買って欲しい。高画質版「走るガンガー」も見れるぞ!!!!!!

 

アストロガンガー』のBlu-ray化及びパイロット版のアーカイブに尽力した関係者方々に多大な感謝を申し上げたい。ありがとうICHI、ありがとうベストフィールド。『星の子ポロン』のBlu-ray化も待ってます。あと『アストロマン』の主題歌も音源化してください(ワガママ)

あと『アストロガンガー』のスパロボ参戦も待ってます。歴史改変でガンガーではなくよりロボットらしいジャンボが採用されることになり、その影響で他作品のロボットたちもゲロ吐くようになっちゃったから黒幕を倒しに行くみたいなストーリーでどうですか?ダメですか、そうですか…。

 

(6041字)


*1:ちなみに『マジンガーZ』自体は漫画版が『アストロガンガー』放映より2日早く連載開始している。

*2:作中では「アストロマン」と呼んでた気がするが、解説書には「アストロ・ジャンボ」と書かれてるのでそれで表記します。

*3:なんかチャー研のスカイロッドみたいな飛行物体に乗って、そのまま機体にINする感じ。