まぎかる゜火葬場

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感想「LIVEミュージカル演劇『チャージマン研!』」 ここは魔界だった【#チャー研ステ】

昭和に生まれ、平成に復活し、令和に進化をする伝説のカルトアニメ『チャージマン研!』。

最初にウェブメディア記事の見出しを見た時はあまりの事に目を疑った。

 

この記事を開いているような人には説明は不要かもしれないので『チャージマン研!』がどういった作品かの前置きは省く。調べればいくらでも情報が出てくるだろう。

 

チャー研の舞台、いやミュージカルだろうか?いわばチャージカル(公式名称は「チャー研ステ」)はどんな物になるか全く検討がつかない。

2000年代後半、ニコニコ動画の釣り動画経由でチャー研を知った自分からすれば、チャー研の展開もここまで来たかと感慨深さを感じると共に不安感もとてつもなく大きかった。

 

しかし舞台とはアニメと違って演者と観客の距離が非常に近い表現媒体の一つ。ましてやチャー研という味の強いコンテンツをそこにどう落とし込むかは非常に興味があったので楽しみにしながら土曜日の昼公演を迎えた。

 

 

そこは魔界。

 

www.clie.asia

※以下ネタバレに言及しつつ、思った事や感想を記す。ちなみに筆者には観劇の知識や経験はあまりありません。

 

俺が会場(新宿FACE)に到着したのは開演の30分前、新宿は迷う…。もう少し時間に余裕を持って到着したかった。

エレベーター(中でジュラル星人と話してた)で上がってみるとクラブのような暗い照明の中に既にすごい人だかりが。

「こいつらみんなチャー研ファンなのか…?」と思ったのだが、一番に気になったのは謎の女性率の高さ。チャー研ってこんな女性層も厚い作品だったのか!?それとも元からの舞台ファンなんだろうか…。

 

少しの気まずさを抱きつつ、まずはドリンクと特典のサコッシュを引き換えに待機列へ並ぶ。

チャージカル、驚いたのは演者の方々(全員ではないだろうけど)が受付とか案内してるんですね!?泉博(研のパパ役)やジュラル星人がクソ丁寧に案内してくれる図はとてもシュールだ。

 

その後は物販列へ。パンフレットなど色々売られてるが、どうやら公演のDVDとメイキングDVDを同時購入するとサウンドトラックみたいなのも付いてくるらしい。

が、大体11,000円程とバカでかい出費になるので見送らせていただいた。仕方ないね♂

ちなみにグッズ自体はチャポニカ学習帳とかいうチャー研に登場する泉家がプリントされた比較的安めのノートだけ購入しました。結構サイズも大きく表紙も良い感じなのだが、中身は特にチャー研のキャラクターがプリントされた物でもなく普通のノートだったのでそこは残念。

公式の紹介ツイートを見ると絵日記を描ける仕様とあるので、それに合わせたんだろうか。

 

前準備は済んだので、いよいよ公演が行われるステージに入る。

ステージはレスリングのように観客席が四方から挟まれる形になっていた。ちなみに自分は一番高いジュラルシート(10,000円)を購入したので、前から2列と良い席に座る事ができた。

 ただ会場自体はそこまで広くないので、ぶっちゃけ後ろの席だったとしてもあまり変わらないんじゃないか、と思った。そうと知っていればあの時…(パパ)

 

いよいよ開演

で、ここから休憩も合わせ2時間に渡る公演が始まるわけだが…

 

何これ!?

 

いや、マジで何これ!?感想でまとめるの無理でしょ…。記事冒頭でネタバレ注意とか書いたけどネタバレもクソもあるか!この感想がこのブログ最初の記事とか世も末だよ!

 

というのもまず目に付くのが4人登場する泉研である。

(もちろん原典のアニメで本物の泉研が二人以上登場した事など一度もない)

初発表時から散々宣伝されていたのだが、この舞台には4人の泉研が"なんの説明もなく"同時に登場する。

しかも最後の最後まで「研?原典でも4人いるよ、当たり前じゃんw」みたいなノリで舞台が進行する。そう、劇中でなぜ研が4人いるかは一切説明されないのだ。*1

研が最初から4人いるという認識になっているので、他の登場人物と研間の会話が大分カオスな事になっており、具体的には問答を一々4回分行う。ポプテピピックもびっくり。

もちろんジュラル星人との戦闘シーンも研4人が戦う。死体となったジュラル星人やジュラルの魔王を4人の研が取り囲むシーンはハッキリ言って魔界としか言いようがない。頭を抱えて見ていました。

 

登場人物の言動も大分原典から離れている。

まず全体的に登場人物の感情表現が原典から大分オーバーになっている。まぁこれは舞台化に当たりわかりやすさを重視した物だろうし、ネタアニメとして評されている本作なので許されるのかもしれない。

先述の4人の研は差別化のためか、「おそ松くん→おそ松さん」のように別々のキャラ付けがされている。すごい金切り声で暴言を情緒不安定気味に吐く研もいれば変な訛りで喋る研も、チャージマン剣よろしく光線銃を使わず日本刀でジュラル星人をバッサバサ斬っていく研もいる。意味がわからない。観客に一々「ころすよ☆」とか言ってくる研もいるし…。

バリカンは劇中で一回しか使ってない「ゲス」語尾を雑に使うし、ジュラルの魔王もやたら「気にするな!」を連呼する。

泉博なんて原典とは正反対の厳しい熱血キャラと化してしまっている。

 

極めつけは原典の味とは言えないよくわからないギャグや茶番だ。

今こそネタアニメとして評価されているアニメ『チャージマン研!』だが、別に作中にはおもしろいギャグシーンなどが存在するわけではない。本作は至って真面目なヒーローアニメなのだ。*2

 

 

後年にネタとして評価されたのは、放送時間が短いが故の独特な尺の使い方とテンポ、間。低予算が故のチープなアニメーションや時々挟まる色ミスといったツッコミどころなのである。

「忠実に再現」するのであれば無理に原典に存在しないギャグや茶番シーンを入れる必要はない。恐らく舞台ファン向けのネタもあっただろうし、概ね観客は笑っていたが自分の感性がズレてるだけなのだろうか、ギャグ自体もそこまでおもしろいとは思わず俺は終始真顔だったというのは言っときたい。唐突に始まるおそ松さんパートとかマジでなんだったんだよ!?

 

楽しいパーティーかと思いきや、魔界に放り込まれてしまった。それが舞台を見始めて数十分の感想であった…。

 

でも…

反面、良かった点も多く存在する。

 

まずはチャー研を2.5次元の舞台へ落とし込むに当たって、原典のアニメが持つ味をちゃんと舞台ナイズしていた点だ。

例えば舞台中に登場するあらゆる小道具やセット、その使い方が挙げられる。これが滅茶苦茶チープなのだ。全体的に幼稚園のお遊戯回レベル、マジで。

アルファガンからはシャボン玉が発射されるし、研の乗り物であるスカイロッドは園児の乗り物ごっこみたいな感じ。

研とジュラル星人の追いかけっこもステージの四辺を情けなく走っていたり、効果音がないのでわざわざ俳優が発声する事で再現したり…低予算が故にチープになってしまった原典アニメを舞台向けに再現していたと思う。

 

一部俳優陣の演技も要注目だ。

特に俺が推したいのは村上幸平演じるジュラルの魔王。俺は特撮ファンなので観劇中は特に彼に注目していたのもある。*3

その非常に高い質のメイクもさる事ながら、悪役のトップとしてのニヤリとした顔、声優本人から演技指導を直に受けたのではないかと疑う程に似せた声質とトーン*4、どれを取っても十分にジュラルの魔王だったと言わざるを得ない。正直な所、目を隠して観劇したらジュラルの魔王ご本人が来たのでは!?と疑ってしまうぐらいだ。

 バリカンも良かったですね。舞台化に当たってのあまりにも異質すぎるビジュアルでもうコイツは"勝ち"なのだけども、こちらも声のトーンや演技が非常に原典に近いと俺は感じた。

 極めつけは研の妹・キャロン。演じるのは男性という事で驚いたのだが、圧倒的にヒロインチックでとにかく可愛かった…。役とは反対の性別の方が演じるというのは舞台ではよくある印象だが、ここまで「良い…」と思わせられるとは…。

 

先程は「ギャグや茶番が(個人的に)おもしろくなかった」と言ったが、これもあくまでトータルの話であって、所々クスリと来る場面もあった。

研がアルファガンからシャボン玉を発射するシーンではシャボン玉がジュラル星人まで届かずに落ちてしまうので、ジュラル星人側がわざわざ近づいてやられるシーンは率直におもしろいし、チャー研の舞台だからこそできるおふざけだと感じる。

研が4人という点でいえば、3人の研が残り1人の研を甲斐甲斐しく着替えさせるシーンも好き。

 

舞台に付き物であるミュージカルパートも荒々しく、それでいて印象に残りやすい物だったのも評価点であろうか。残念なのはこれらを収録したサントラの入手条件が非常に厳しい事だろうか…単独販売してくれ頼む…!

 

何より本舞台は俳優陣の方々が「普段はできない演技をしてやるぞ!」とテンション高めで楽しそうだった事に尽きるであろう。

高すぎてかなり狂気ではあったが、まぁそれもチャー研の味という事で…。

 

結局、泉研はなぜ4人いたのか

話は戻るが、最後まで説明のなかった「泉研がなぜか4人いる」問題(問題?)

公演終了後にその理由をずっと考えていたのだが、中々まとめるのは難しかった。構成を担当した方には是非答えていただきたい…。

 

「その方が話題になる」「殺陣シーンが映える」以上の何もない気もするが、鍵はニコニコ生放送と提携して行われた「チャージマンドリーム」だろうか。

 これはニコ生のギフト(有料)が最も投票された俳優陣やスタッフが後半パートでチャージマン研役に抜擢される(!?)というシステム。

俺が見に行った公演ではキャロン役の方がトップの投票数を得たようで、4人の研に助けられながらチャージマンに変装を果たし、セクシーポーズでジュラル星人をなぎ倒していた。

そう、役の配当に縛られずに全く関係ない人がチャージマン研役に選ばれるという前代未聞なシステムだ。そもそも全公演がニコ生で無料配信されてるのもおかしい。

 

このシステムが果たしてニコ生側からの提案*5なのか舞台の構成担当側からの提案なのかは存じ上げないが、当然このシステムや企画を実行するに当たって、作品への文脈がないと観客側は困惑してしまう。いきなり別の人が主人公を演じるのだから…。

 

では、どうするのかと言えばそもそもの主人公である研を4人に増やしてしまう、という結論に至る(本当か?)

4人になった研に慣れてしまった我々は今更研が一人増えたところでどうも思わないし(本当か!?)システムへの理解がしやすくなるという流れだ。

 

チャージマンドリームの企画が先に来てから研が4人になったのか、それとも逆なのかはわからないが俺はそう解釈しても良いのでは、と思った。

 

あと考えられる理由としては「この舞台はあくまで二次創作」というアピールで観客や原典のファンに理解をもらう目的もあるのだろうか。

原典ファンに配慮しすぎるように原典をただなぞるだけでは舞台としてはあまり面白みのない物に仕上がる可能性は高い。ネット上でネタアニメとして評されてるチャー研を取り扱う以上は盛大にネタに走り、バズを狙って動員数を増やす必要がある。事実として本公演は一部パートを除き写真撮影もOKだし、SNSに投稿するのもむしろ推奨するという従来では考えれない取り組みを行っていた。

第一報から研が4人という点を推していたのは「原典とは違う二次創作(一応公認)なので、コアなファンにとって気に障る描写があるかもしれない」というのを理解してもらう目的もあったのではないだろうか。

これであれば舞台の序盤でキャロンが何故か原典にはない鞭を持って登場人物を引剥叩いていた謎の描写にも納得がいく(本当か!!??)

 

■191105追記

4人の研のアイデア元などがインタビューで語られていたようです。

 

25jigen.jp

 

総評、チャー研というIPのこれから

普段観劇とは無縁な、一概のチャー研ファンとしては理解し難い描写もあった。

しかしコアなチャー研ファン、ライトなチャー研ファン、コアな舞台ファン、そして「これからなるであろう舞台ファン」にできるだけ配慮しようとバランスを取った構成の数々、チャー研だからこそできる斬新な表現への努力は間違いなく称賛に値する物であり、10,000円のジュラルシートを買った俺にほぼ全く後悔はない。

 

特に取り上げたいのはチャー研という特殊なIPと「これからなるであろう舞台ファン」の関係性だ。

仮にネットで人気、言い方を変えればネットでバズを得られるチャー研ではなく、他のアニメ作品の舞台化だったら「これからなるであろう舞台ファン」を増やす事は果たしてできるだろうか?

俺はそれは難しいと思う。理由は単純で、SNSでの様子を拡散できない、もしくは拡散してもチャー研と同等の面白みを伝える事ができない他のアニメ舞台のターゲットは「コアなアニメファン」「コアな舞台ファン」に限られてしまう。

コアなファンだけでは展開から得られる利益も制限されてしまうかもしれない。さらにその層が減る速度も決して遅くはないのでいつか舞台というメディアが限界を迎える可能性だって存在するのだ。

現に俺にとって舞台はハードルが高そうに感じ、決して積極的に享受しようと思う物ではない。

 

一方でチャー研ならどうであろうか?まず、コアなチャー研ファンはどんなもんかと見に行くだろう。コアな舞台ファンもチャー研が知らなくてもお気に入りの俳優陣やスタッフがいるのであれば見に行く可能性は高い。

加えてチャー研には平成に醸成させていった「なんでもあり」「ネットで高い知名度と人気を誇る(最早カルトではない)」という要素が存在する。

 

事実としてこのチャージカルはネット上でのバズという側面では大成功を得ている。発表された際にはトレンド入りも果たし、やしろあずきといったネットでの著名人*6も見に行った結果、拡散された写真も高いエンゲージメントだ。

結果として「舞台はあまりわからないけど、チャー研ならおもしろそう」と本来ならハイコンテクストな参加を求められる舞台への誘致に成功している。

この「ライトなチャー研ファン」から舞台の楽しさに気づく者も出てくるであろう。そこから新たに「コアな舞台ファン」が生まれるのだ、と俺は思う。

 

他にこんな事をこんなやり方で実現させられる作品は存在するだろうか?世の中にはネタアニメとして評されてる作品はたくさんあるが、チャー研程の訴求力に達してる物は俺の中ではないという認識だ。現状ではチャー研にしかなし得ない事だと思う。『星の子ポロン』も同じぐらいになってくれればなぁ…。

 

 

冒頭の「昭和に生まれ、平成に復活し、令和に進化するチャー研(意訳)」というフレーズはチャージカルの冒頭で行われたチャー研という作品の解説内の物である。

チャーケストラ(チャージマン研!ライブシネマコンサート)でも、写真撮影及びSNSでの拡散というオーケストラ公演としては異例の試みは行われたし、普段オーケストラを見ない層をチャー研というコンテンツを経由して誘致する事に成功した。

 

チャージマン研!』がこれ以降どんな展開を迎えるのかはまだ誰にもわからない。しかしチャージカルからは少なくとも、その令和におけるチャー研の進化の方向性が垣間見えたのではないだろうか。

何があっても、一ファンとしてこの先を暖かく見守りたいと思う、そう決心したのであった(締め)

 

最後に、チャージカルは前述の通り全公演がニコ生でありがたい事に無料配信されている。一部のパートだけプレミアム会員ではないと見れないが、540円で見れる+他のniconicoのサービスや番組も制限なしで見れると考えれば全然安いので*7、地方で見れなかったり観劇しに行くか迷ってるかわいそうなお友達はいかがだろうか。

コメント付きで、大勢で見る事が楽しい舞台なのは間違いない。

blog.nicovideo.jp

(8123字)

 


*1:最後に研のパパ(泉博)が4人の研を見て何かに気づくシーンはあるが、その次のシーンでは何事もなかったかのように戻る。

*2:筆者はボルガ回を除いて『チャージマン研!』をそこまで超展開アニメだとは認識していない。

*3:村上幸平は特撮ファンでも絶大な人気を誇る『仮面ライダー555』の2号ライダー「仮面ライダーカイザ(草加雅人)」や『動物戦隊ジュウオウジャー』では「ジュウオウバード(バド)」を演じ、当舞台でもそれと絡めたネタがあった。

*4:公演の練習前にジュラルの魔王の声を演じた佐藤昇氏と会った事はツイートしている

*5:財布で争わせるのだからニコ生側に大きな利益が入るので動機としては十分だろうか。

*6:めっちゃファンがチャー研をどうしようもないやばいネタアニメとして過度に持て囃してそう(偏見)(失礼)

*7:要するに更新前に解約してしまえばそれ以上はかからないのである.。